計画的なイタリアン 渋谷
問題は、この日本の制度は、後ろから追いかけてくる人たちを振り切るようにはまったくできていないという点である。
それどころか、前ばかりを見て突進する日本の制度は、後ろから追い上げている中国やアジア諸国から見ると、スキだらけなのである。
中国のやり方が以前の日本に比べかなりスマートであり、その結果多くの日本人は以前の欧米人に比べ、どこまで中国に追い上げられているか気づいていないという点である。
この点を理解するには、4O年前の日本の手法を見る必要があるが、当時の日本の輸出攻勢はすさまじいものであった。
しかも日本はいったん外資を日本国内から追い出してから攻勢をかけたのである。
例えば、かつて横浜にはアメリカの自動車メーカーの工場があったと聞くが、日本はそのような工場を全部閉鎖させて外資を日本から追い出している。
当時の日本には「自動車鎖国」という言葉があったくらい、外国からはまったく何も入れず、入れる場合は高率の関税をかけた。
その一方で大量の製品を輸出したのである。
日本からの輸出攻勢を受けたアメリカは、すぐさま「これは大変なことになる」と直感した。
というのも、「M」や「T」など、普通のアメリカ人には慣れない発音のブランドが怒濡のごとく押し寄せてきたからである。
「S」だけは、アメリカ人が自国のメーカーだと思い込んでいるそうだから話は別だが、多くの日本メーカーは諸外国にその名前と輸出攻勢によってかなりの危機感を与えてしまったのである。
では、今の中国の場合はどうかと言うと、彼らは日本のようなやり方はしていない。
その証拠に、これだけ中国製品が入ってきているのに、中国企業の名前を挙げられる人は日本にはほとんどいない。
過去20年間、日本はずっと中国に対しては貿易赤字を出していたにもかかわらず、中国のブランド名はほとんど表に出ていないのである。
誰も発音できないような中国メーカーの名前やブランドならば、日本でも欧米でももっと早い時点で中国の輸出攻勢に気づいて危機感が高まっただろうが、そうはなっていないのである。
また日本は、相手が外国企業なら官民そろって排他的な行動をとることがあるが、中国で生産しているのが日本のメーカーなら、それらの製品を日本から排除するのは難しい。
かくして日本には中国の製品が静かに、確実に入るようになったのである。
日本のグローパリゼーションに対するスキが拡大している要因は、日本の場合、政策決定者からマスコミ関係者まで世論形成に関係する人たちがすべて東京在住であるという点である。
その東京はグローパリゼーションに乗れて儲かっている大企業のほとんどが集まつており、大変繁栄している。
また都心には、グローバル展開できる人たちが集まってくるから景気がいい。
地方はその逆の立場になるから、極めて景気が悪い。
それが今の日本の姿なのでマスコミはすべて東京在住だから、地方の悲鳴はほとんど世論形成に届かない。
中国の存在がオモテに現れず、東京在住のマスコミがグローパリゼーションのプラス面しか見ていないからといって、日本人が中国に脅威を抱いていないのかと言うと、それは違う。
それどころか危機感は今すさまじい勢いで拡大しているのである。
それを示したのが図出である。
これは、内閣府が60年代から行っている「お宅の生活は、これから先、どうなっていくと思いますか」というアンケート調査の結果をグラフにしたものである。
これを見ると、95年ぐらいまでは、「将来はよくなる」と思っている人の方が圧倒的に多かった。
第一次オイルショックと第2次オイルショックの時だけは「これから悪くなる」と思っている人たちが瞬間的には大多数になっているが、この時は世界的な危機だったので例外とつまり、95年ぐらいまでの日本国民は、基本的に言えば将来に楽観的だっすべきであろう。
たということになる。
95、96年を境にして、それが反転し、その状況が直近まで続く。
つまりこの時期から、将来を悲観的に見ている国民の方が、楽観的に見ている国民よりずっと多くなっていくのである。
この悲観論者の比率拡大は20O3年まで続くのだが、これは充分に説明がつく。
この時期はバランスシート不況が本当にひどくなっていたし、H本首相の消費税増税や財政出動のカット、K泉首相の「国債発行枠3O兆円」といった、不況を悪化させる失策が続いたからである。
K泉政権下の20O3年に、株価が76O7円の最E値を記録した時は、国民の多くが「日本はお先真っ暗だ」と感じたとしても、決して不思議ではなかったのである。
問題はその後である。
株価がO3年の底値から倍になり、雇用も大幅に改善され所得も増えてきたにもかかわらず、「これから悪くなっていく」という数字は全然下がっていないのである。
本来ならば、「悪くなる」と思っている人たちの比率はもっと下がって、90年代央ぐらいのレベルになっていていいはずなのに、まったくそうなっていない。
それはなぜかと言うと、バランスシート不況という一つの大波は去ったけれども、もう一つのグローバリゼーションという大波が押し寄せてきていて、中小企業や零細企業、地方在住の人たちがその波をまともにかぶっているからである。
実際に、「中小企業・零細企業・地方」の部分が、日本でいちばん空洞化が進んでいる。
生産拠点が中国や東南アジアにどんどん移動しているからである。
その上、アジア諸国からの輸入品が、彼らのつくっている製品や作物の日本に襲いかかるグローパリゼーションの大波価格を押し下げている。
グローパリゼーションの影響をもろに受けているのが、この「中小企業・零細企業・地方」という部分なのである。
その一方で、東京はグローパリゼーションの「勝ち組」だから、都心にいると、なぜ地方が格差を言、つのか、公共投資や道路建設にこだわるのか、まったく理解できないのである。
だからO7年7月の参議院選挙を見てみても、東京在住のマスコミが予測した結果と実際の選挙結果はまるで違っていた。
幸か不幸か、定数是正が進んでいなかったので、地方の不満がますます顕著に表れていた。
政治に関わる人たちは、都会のマスコミ報道だけを見ていると、とんでもない間違いを犯すということを参議院選挙から学んだはずである。
そういう意味では、グローパリゼーションの負の部分が表れている地方や中小零細企業が今どうなっているか、彼らがどんな危機感を持っているか、どういう解決法があるのか、ということを日本国全体で考えていかなければならない。
現実問題として将来を悲観的に見ている人たちがこれだけ多く、楽観的に見ている人たちがこれだけ少なければ、日本の内需拡大はかなり難しいことになるだろう。
将来に悲観的な人たちがそれほど積極的にお金を使うとは思えないからだ。
欧米がサプライ・サイド改革で日本からの追い上げを振り切って、新しい成長軌道に乗るのに20年近くかかったが、そこで彼らが気づいたのは絶えず先進的なこと、つまり新しい製品、サービス、デザインを創出できる人材を育てていかなければいけないということであった。
またその意味では、この間も米国の大学がずっと世界の大学教育をリードしていたことはアメリカにとってはたいへん幸運だった。
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